レンジ相場とは|トレンド相場との見分け方とFXや株で有効なテクニカル分析


レンジ相場とは、FXや株などの相場で、値動きが膠着(こうちゃく)して、同じ価格帯を行ったり来たりしている状態のことを指します。保合(もちあい)相場やボックス相場、往来(おうらい)相場などとも呼ばれます。これとは反対に、値動きが一方行に動くことを、トレンド相場といいます。FXや株式では、このレンジとトレンドの2つが織り混ざり、相場が形成されていきます。

この記事では、約10年の取引経験の中で数多くのレンジ相場とトレンド相場を経験してきた著者が、レンジ相場の特徴や見分け方、レンジ相場とトレンド相場の割合、どんなテクニカル指標が有効なのかを解説します。また、初心者がレンジ相場で勝つための知識や、注意点についても紹介します。レンジ相場で取引をして大怪我をしないように、しっかりと知識を身につけてください。

1.レンジ相場とは|意味やトレンド相場との割合


ここでは、レンジ相場の詳しい意味や、レンジとトレンドがどのくらいの割合で現れるのかを解説します。そして、レンジ相場といっても単純ではなく2種類のレンジ相場があることにも言及し、取引する際の注意点をお教えしましょう。

1-1.レンジ相場・トレンド相場とは?意味を解説

レンジとは英語で言えばrange(範囲)のこと。一定の範囲内で価格が上下動を繰り返すことからレンジ相場と呼ばれます。英語圏ではSideways Trend、つまり横向きのトレンドという言葉がよく使われます。レンジ相場は、株やFXの金融市場全般で使用されている用語です。また株やFX以外、例えば商品取引や仮想通貨などのあらゆる相場で、よくある値動きということもできるでしょう。

最初に説明したように、レンジ相場と対になっているのがトレンド相場です。英語では、上向きのトレンドを「up trend」下向きのトレンドを「down trend」と言います。日本語でいえば、それぞれ上昇トレンドと、下降トレンドです。ニュースなどでもよく話題になるトレンド相場の方が、馴染みがある言葉かもしれませんね。例えば、アベノミクス初期の頃は、株やドル・円の価格が上がり続けました。このようにひたすら上昇あるいは、下降するのがトレンド相場です。

あらゆる相場は、レンジとトレンドの2つで価格を形成していきます。ですから、今現在の相場がレンジ相場なのか、トレンド相場なのかを判断することが、取引の成功に深く関わってきます。これについては2章で詳しく解説していきます。

1-2.レンジ相場とトレンド相場の割合は?

FXや株式では、レンジ相場とトレンド相場の割合はどのくらいになるでしょうか。株などの銘柄などによってもちろん変わってきますが、一般的にはレンジ相場が7割、トレンド相場が3割と言われます。また、参加者が多い銘柄や市場ほどレンジ相場を形成しやすい傾向があります。

でも、ここで注意してほしいことがあります。レンジ相場にも大きく分けて2種類あるということです。
一つはある価格帯をおおむね規則正しく動くわかりやすいレンジ相場。もう一つは、動きが複雑でその中にいると、とてもレンジ相場のようには思えないけれど、あとでチャートを見るとレンジ相場だったとわかるような難しいレンジ相場です。

また、難しいレンジ相場の場合、オーバーシュート(相場の行きすぎた変動)することもあります。オーバーシュートするなら、レンジ相場ではないではないかと、あなたは思ったかもしれません。でも価格が行きすぎても、すぐに戻るような値動きの場合、チャート上ではその一瞬の値動きは例外として、レンジ相場のような状態を維持することが多いです。

ですから、7割のレンジ相場の中でも、わかりやすいレンジ相場と難しいレンジ相場が織り混ざって、価格を形成していきます。そうでないと、レンジ相場の下限で買って、上限で売れば誰でも儲かってしまいます。しかし、そのような相場はありえません。ですから、難しいレンジ相場の複雑な値動きで、市場参加者の損切りを煽り、振り落としながら、相場は動いていくのです。

2.レンジ相場とトレンド相場を判断|見極める方法3つ


1章で説明したように、レンジ相場は全体の7割にも及びます。ということは、相場のほとんどはレンジ相場であるということができます。例えば、あなたに全く相場の知識がなくて「今がレンジ相場なのか、トレンド相場なのか」を当てずっぽうで判断するなら、「レンジ相場」といえば半分以上は当たることになるでしょう。レンジ相場は、難しい値動きが織り交ざりますから、非常に読みづらい値動きになりがちです。反対に、トレンド相場は、比較的単純な値動きを形成します。

2-1.どう判断する?レンジ相場とトレンド相場

現在がレンジ相場かどうかを判断するのに、最も単純な方法は、現在がトレンド相場かそうでないかを見ることです。つまり、相場にはトレンド相場かレンジ相場の2つしかないのだから、現在がトレンド相場でなければ、レンジ相場だと考えるのです。

なぜトレンド相場の方に注目するかというと、上記でも説明したようにトレンド相場の方が簡単に見分けやすいからです。ですから、レンジ相場を見分けるには、まずトレンド相場でないかという視点で考えるのです。では、トレンド相場をどう見分ければいいでしょうか。簡単な方法を3つ紹介しましょう。

2-2.レンジ相場の見分け方1|トレンドラインを引く

現在がレンジ相場がトレンド相場かを判断する方法の一つに、安値高値が切りあがっている、もしくは切り下がっているかの確認とともに、トレンドラインを引いてみるということが挙げられます。トレンドラインとは、ローソク足の高値どうし、あるいは安値どうしを結んで引く線ことです。その線が綺麗に右肩上がり、あるいは右肩下がりになっていたら、ドレンドが出ている(つまり現在はトレンド相場だと)言えるでしょう。

逆に安値高値が切りあがっておらず、もしくは切り下がっておらず、トレンドラインが綺麗に引けないような状況なら、現在はレンジ相場の可能性が高いと判断できます。

しかし、注意しなければならないのは、この条件さえ満たせば、必ずしもレンジ相場やトレンド相場と言えるかというとそうではないということです。数秒前まではレンジ相場だったのに、突然トレンド相場になることもあります。ですから、複数の条件をみて総合的に判断する力が必要です。

これは、言葉で表すのは困難なのですが、ある人を見てその人が心から喜んでいるのか、あるいは怒っているのかを推測するには、その人の言動や表情などのいろんな要素に基づいて判断しますよね。また、その人との付き合いが長くなれば、その推測も簡単になってきます。トレンドやレンジの判断もこうした他人の心の中を推し量ることに、本質的には似ています。こう書けば何となく、どう判断しているのかが理解していただけるのではないでしょうか。

2-3.レンジ相場の見分け方2|移動平均線で判断

レンジ相場かそうでないかを判断する方法の2つ目は、移動平均線を見る方法です。けれど、上記で紹介したトレンドラインを引く方法よりも精度は落ちるので、補完的に使用するといいでしょう。

移動平均線とは、ある一定期間の終値の平均値を結び、グラフ化したものです。買い(ロングポジション)の場合、この移動平均線の期間の短い線が、期間の長い線を下から上に抜けた状態を長期にわたって維持し続けていれば、上昇トレンドが出ていると見ることができます。

余談ですが、このような状況の場合、期間の長い線が短い線を上から下に抜けようとした時、多くの買いが入ってきます。その力がトレンドを維持し続けようとします。なお、下げトレンドの場合は、この逆に考えてみてください。

また、移動平均線の傾きにも注目してみましょう。右肩上がりなのか、右肩下がりなのか、あるいは、ほぼ平行になのか。平行に近い場合は、レンジ相場を形成している可能性が高いということになります。

2-4.レンジ相場の見分け方3|ローソク足の数を見る

ローソク足の数で、トレンドを判断する方法もあります。ローソク足は、価格が上昇した時は陽線、下降した時は陰線をつけます。当然ですが、価格が上昇してトレンドを形成する時は、陽線が多くなります。

つまりチャートを開いて、陰線より陽線の方が圧倒的に数が多く、その面積も広いなら、上昇トレンドが出ている可能性が高いということです。反対に陽線よりも陰線の方が圧倒的に数が多く、その面積も広いなら下降トレンドの可能性が高いです。

陰線も陽線も同じくらいの数なら、現在はレンジ相場だと判断することもできるでしょう。単純ですが、迷った時に瞬時に判断できる方法の一つとして、知っておいても損はないと思います。

2-2.レンジの考え方は株もFXも同じ
レンジ相場やトレンド相場の判断の仕方は、株式相場であろうとFXであろうと大きな差はありません。いえ、チャートを使って取引する相場であれば、あらゆるものに適応できるでしょう。とはいえ、文字で書くと簡単そうに見えるのですが、実際には一筋縄ではいきません。

上記でも触れたように、実際の相場では、トレンドが出たと思ったら、すぐにレンジ相場に移行したり、レンジだと思っていたら、上限を突き抜けてトレンドを形成し始めたりということがよくあるからです。今現在がレンジ相場なのかトレンド相場なのかを判断できても、近い将来にレンジやトレンドを維持し続けるのかということは誰にもわからないのです。けれど、長期にわたって形成されたレンジやトレンドほど崩れにくいという傾向はあります。

3.株にもFXにも使えるレンジ相場のテクニカル分析


この章では、レンジ相場に使えるテクニカルについて解説します。ただし、レンジ相場で稼ぐことよりトレンド相場で稼ぐことの方が、より苦労は少ないということは覚えておいた方がいいでしょう。短期間で相場で財を築いた人たちの多くは、トレンドにうまく乗って結果を出すことが多いからです。

とはいえ、相場の約7割をしめるレンジ相場で稼ぎたいという気持ちもわからないわけではありません。そこで、ここでは、レンジ相場に強いテクニカルについて紹介しましょう。

3-1.レンジ相場に強いテクニカル指標3つ

レンジ相場で有効に機能しやすいテクニカルの代表として、「ストキャスティックス」「RSI」「MACD」が挙げられます。MACDはトレンド系のテクニカル指標に分類されますが、レンジ相場でもある程度機能します。ただし、MACDはレンジ相場において、ストキャスティックスやRSIよりも騙しが多いです。反対にストキャスティックスとRSIは、トレンド相場では全く役に立たないけれど、レンジ相場においてはMACDよりも有効なテクニカル指標ということができます。

4.レンジ相場を形成しやすい時間帯や銘柄とは

4-1.FXででレンジ相場を形成しやすい時間帯は?

FXにおいて、レンジ相場を作りやすい時間帯はいつでしょうか? レンジは、相場が膠着している時に現れます。つまり、価格も小動きになりやすいということです。ここでは、デイトレやスキャルピングで取引するケースで考えてみましょう。

朝5時〜8時
オセアニア市場が開く時間帯で、値動きは小動きになりがちです。週明けや大きなニュースがなければ、レンジ相場を形成しやすい時間帯と言えるでしょう。とはいえ、この時間帯は、市場参加者が少なく、特に早朝は取引量が少ないため、値が飛びやすいという特徴もあるので注意が必要です

朝9時〜午後15時
東京で株式市場が開いている時間です。株式相場の値動きにもよりますが、価格変動が比較的緩やかでレンジ相場を作りやすい時間帯と言えます。ただし、9時55の中値に向けて円高になりやすい傾向があります。時期や相場状況にもよりますが、9時55分に買いを入れて、午後になって価格が落ちてきた時に決済するという勝ちパターンも多く見られます。

午後15時〜午後19時
その日の東京市場の通貨オプションの権利行使の最終的な締切時間が15時になりますので、東京の株式市場閉まったとたん値動きが活発になることがあります。また、17時にはロンドン市場が開きますので、一気に市場参加者が増えてきます。活発に取り行きされ短期のトレンドを作ることもよくありますので、レンジ相場を狙って取引すると思わぬ痛手をこうむることもあります。

午後19時〜午後21時
ロンドン市場が値動きがひと段落して、高値圏あるいは安値圏で膠着しやすい時間帯です。膠着しているということはレンジ相場を作りやすいということです。この時の小動きをスキャルピングなどで取って行くのがレンジ相場での取引もありですが、労多くして利益は少なしということになりがちなのは覚えておきましょう。また、どうしてもこの時取引したいなら、私であれば損切りラインはかなりタイトにします。

午後21時〜午後24時
21時以降は、FXの値動きに影響を与える指標が次々に発表されます。また22時からニューヨーク市場が開いて、市場参加者が一気に増えてきます。つまり、値動きが最も激しい時間帯です。この時間帯にレンジ相場を狙って取引するのは賢明ではありません。どちらかといえば、トレンドが作られるのを期待して、取り引きした方が良い結果が出るでしょう。しかし、短期トレードの場合、指標をまたいで取引きするのはギャンブルのような行為になるということは言うまでもありません。

午後24時〜朝3時
夏時間であれば午後24時、冬時間であれば午前1時は、ロンドンフィックスと呼ばれる東京市場でいう中値に相当する基準レートを決める時間になります。その前後は、相場が大きく動きやすいです。また、大きく動いたと思ったら、ブーメランのように価格が戻ってくるという動きもよく見られます。これも一種のレンジと呼べますが、値動きが荒くレンジ相場として取引きするのは勇気がいる時間帯です。

朝3時〜朝5時
大きなニュースやFOMCなどがなければ、比較的緩やかな値動きです。レンジ相場を形成していることも多い印象です。ただし、私自身この時間は就寝しているので、取引きしたことはほとんどありません。あくまでチャートを後から見た時の印象です。

ここではFXの各時間帯の傾向をレンジ相場という視点で見てみました。結論はレンジ相場を狙うなら、朝9時〜午後15時、午後19時〜午後21時あたりが狙いどころということになりますが、これはその傾向があるというだけで、もちろんその日の全体の相場の動きにも影響されるので注意してください。

4-2.レンジ相場を形成しやすい株式の銘柄は?

株式市場でレンジ相場を作りやすい銘柄については、あなたが取引しようとしている時期や日経平均のトレンドなどにも左右されます。ひとつひとつの銘柄を丁寧にみていくのが一番いいのですが、それではかなり時間がかかってしまします。そこで、以下のサイトで「ボックス上限」あるいは「ボックス下限」の銘柄を絞り込んで、普段使っているチャートソフトで検証してみることをおすすめします。

「株マップ.com」

5.おわりに|レンジ相場を攻略できる?向いている人の特徴


この記事では、レンジ相場について解説しました。記事中でも書きましたが、もちろんレンジ相場を攻略して稼げないことはないのですが、やはりトレンド相場と比べると稼ぎは少ないです。

また、レンジ相場は慌ただしいトレードになることが多いです。ですから、レンジ相場で稼ぐことを考えるよりは、トレンド相場で稼ぐことを目指すような取引をおすすめします。けれど、人には得意な相場・向いている相場というものがあります。

では、どんな人がレンジ相場に向いている人でしょうか。それはチャートを頻繁に見ることができ、かつ我慢強い人です。トレンド相場なら極端にいえば、ほったらかしておいても利益が出ていることが少なくありません。むしろ、メンタルが弱い人の場合チャートを見ないほうがいいくらいです(笑)。でもレンジ相場はそうはいきません。チャートを監視し、いつ反転するかを注意深く見ておく必要があります。そして、難しい値動きになっても心が乱されない我慢強さも必要です。もし、あなたが自分にはレンジ相場の方が向いていると感じているなら、それを極めてみるのも悪くないかもしれません。

なお、相場の動きを知るための基本単位は、ローソク足です。ローソク足を正確に知っておかなくては、トレンドやレンジのことを知ってもあまり意味がありません。以下の記事ではローソク足について、一生使える知識を紹介しています。もしローソク足について、知識に不安があるならぜひチェックしてみてください。

ローソク足とは|一生使える見方・使い方や予測するためのパターンの読み方