フィボナッチとは|FXのMT4で見方・使い方・設定や手法を解説


FXや株で使用されるフィボナッチとは、フィボナッチ数列をもとに導き出した比率を、売買の目安するテクニカル指標の一つです。FXや株などの相場では、価格が波のように動くため、どこまで値が上がるのか、またどこまで値が下がるのかを予測するのは困難です。フィボナッチは、その非常に困難な予測の手助けをしてくれるツールです。

この記事では、フィボナッチの意味や、FXや株などの相場で、どうやって使うのかなどについて解説します。また、どのような根拠で計算しているのかや、フィボナッチと相性の良いテクニカル指標、そして実際の運用方法まで紹介します。相場の反転を見抜き得る、フィボナッチについて、ぜひここでしっかりと学んでみてください。きっと、トレードの成績が向上するでしょう。

1.フィボナッチとは何か


フィボナッチを相場に使う前に、そもそもフィボナッチとは何かを、簡単に学んでおきましょう。急がば回れという言葉もあるように、まず原理原則を知ってから運用することが重要です。

1-1.フィボナッチとは

フィボナッチとは、はじめに紹介したように、フィボナッチ数列を使って相場の反転を予測するテクニカル指標です。フィボナッチ数列とは、2つ前の項と1つ前の項を足していくことで作られている数列のことを指します。具体的に言えば、以下のような数列のことです。

0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610……

上記の数列の一番最初の「0」と「1」を足すと、「1」です。ですから3番目の数字は「1」となっています。3番目の数字「1」と4番目の数字「2」を足すと「3」になるので5番目の数字は「3」です。そして、5番目の数字「5」と6番目の数字「8」を足すと、「13」ですから、7つ目の数字は「13」です。さらに、上記の最後から3番目の「233」と最後から2番目の「377」を足すと、一番最後の数字「610」になります。このように、数列のどこであっても隣り合う2つの数を合計すると、次の数になっています。

また、フィボナッチ数列の隣どうしの項は、必ず互いに素になります。つまり、2つの整数が1以外の共通の約数を持たないということです。

フィボナッチ数列に並んだ数字は、自然界にも多く存在しています。例えば、花びらの数は多くの場合フィボナッチ数です。また、ヒマワリの種はらせん状に並んでいますが、そのラセンの数を数えるとフィボナッチ数になります。つまり、フィボナッチは自然現象の中に現れやすい数といえるのです。

FXや株は、多くの投資家が参加しています。投資家も人間であり、人間の心理的な行動も、自然現象に近づいていく傾向があります。そうした意味で、相場の反転などにおいてもフィボナッチ数が、一つの目安になっていることが多いといえます。次項では、具体的にどうやってフィボナッチを、相場に使っていくのかを解説します。

1-2.フィボナッチで重要な3つの数値の計算方法

どのようにFXや株などの相場に、フィボナッチを使っていくかを説明するために、もう一度フィボナッチ数列を見てみましょう。

0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610……

まず、この数列を使って、相場で使用するための重要な数値を算出してみます。
まず1つ目は、フィボナッチ数列のうち任意の数字を一つ右の数字で割ると数が大きくなるほど、約0・618近づいていきます。
例えば、

8÷13=0.61538461538
21÷34=0.61764705882
89÷144=0.61805555555

というふうに、数が大きくなるほど0.618という数字に近づいていきます。
この0.618という数字が相場でフィボナッチを使う際に重要になります。

2つ目は、フィボナッチ数列のうちどの数字であっても、0.382をかけると2つ左の数字になるということです。上記と同じように数列の右に行くほど、その精度は高くなります。
例をあげると、

13×0.382=4.966
になりほぼ2つ左の数字である5になります。

233×0.382=89.006
となり2つ左の数字89とほぼ同数になります。

この0.382とが2つ目の重要な数字です。

3つ目は、フィボナッチ数列の中の、どの数字も3つ右の数字で割ると、約0.236になるということです。
実際に計算してみると、

21÷89=0.23595505618
となり、約0.236となります。

144÷610=0.23606557377
となり、ほぼ0.236になっています。

この、0.236という数字が3つ目の重要な数字です。

次章では、この3つの数字0.618、0.382、0.236をどう相場に使っていくかを解説します。

2.MT4でのフィボナッチラインの見方・使い方・引き方


フィボナッチには、様々な使い方があります。例えば、フィボナッチ・タイムゾーンやフィボナッチ・ファン、フィボナッチ・アーク、フィボナッチ・エキスパンションなどです。知識として、これらの使い方を知っておくのもいいのですが、相場で多くのトレーダーが意識していて機能しやすいのは、何と言ってもフィボナッチ・リトレースメントです。ですから、この章では、より実践的なフィボナッチ・リトレースメントに限って解説していきます。

2-1.MT4を使ったフィボナッチラインの引き方と使い方

ここでは、FXのチャートソフトであるMT4を使って、フィボナッチラインの引き方を説明します。株などで使うチャートソフトも大抵の場合、似たような機能を備えていますので、ここで説明していることと同じイメージで、ラインを引くことができると思います。

MT4であれば、フィボナッチ・リトレースメントを選択後(下図の緑の丸をクリック)、ドラッグすることでフィボナッチラインを引くことができます。

引き方としては、上昇トレンドの場合、直近の安値から高値に向かって斜めにドラッグします。反対に下降トレンドの場合は、直近安値から高値に向かって斜めにドラッグすれば、フィボナッチラインを引けます。下図は、上昇トレンド時のフィボナッチラインの引き方です(オレンジの丸と矢印で表示)。

安値と高値を結ぶときに、ヒゲを含めるのか、あるいは実体と実体を結ぶのかという議論になることがありますが、私の経験ではFXにおいては、ヒゲを含めないほうが、ぴったりくることが多かったです。

けれど、臨機応変に考えて、それほど厳密に引く必要はないと考えます。フィボナッチラインは誰が引いても全く同じには、なりにくいラインだからです。なぜなら、ヒゲの議論を例に出すまでもなく、直近の高値・安値の判断は人によって異なってくるからです。

厳密には同じにならないけれど、大体皆の意見がおおむね同じになる、そんなラインがフィボナッチラインです。ですから、私の実体験からも、線でとらえるのではなく、面でとらえた方がフィボナッチはうまく使いこなせるのではないかと感じています。どういうことかというと、例えば、厳密に61.8%のラインできっちり反転すると考えるより、面的にとらえてそろそろ61.8%ラインあたりだから反転する可能性もある、と考える方がうまくいきやすいということです。

2-2.フィボナッチラインの見方

チャートソフトで、フィボナッチラインを引くと、1章で説明した3つの数値が自動的に表示されます。すなわち、直近高値から安値までを100%(1)とすれば、61.8%(0.618)、38.2%(0.382)、23.6%(0.236)の箇所に、ラインが自動的に引かれます。

この3つのラインが、押しや戻りの目安になるということです。

2-3. FXでのフィボナッチの設定数値は?

MT4をはじめとしたチャートソフトでは、フィボナッチラインが引かれる位置を自分で変えられるようになっています。

通常は先に紹介した、0.618、0.382、0.236の3つの数値を使用しますが、相場によっては別のラインが意識されていることもあります。例えば、半押しと言われる高値からちょうど半分まで戻った50%(0.500)のラインです。また、0.618を2乗した√0.618=0.786という数字も、意識されることがあります。

これらの数値をチャートソフトに入れてみて、実際に意識されているようなら、基本の3つの数値に加えてみてもいいでしょう。ちなみに、MT4ではディフォルトでは、50%(0.500)のラインが引かれる設定になっています。

また、上昇トレンド時に100を超えて下落した場合にも、どこまで落ちるかということを予測するためのラインがあります。
表にすると以下のようになります。

3.FXフィボナッチの手法|実践編


この章では、フィボナッチ・リトレースメントについて、どのように考えて実際の相場で使っていくかを解説します。けれど、知識として持っておくことと、実際に運用するのでは、まるで違います。その穴を埋めるためにも、ぜひ実際にチャートソフトを開いて同じように線を引きながら、この章を読んでほしいです。そうすればより理解が深まり、実戦で使える知恵となるでしょう。

3-1.フィボナッチを使った基本戦略

フィボナッチ・リトレースメントは、トレンド発生時に機能するテクニカルです。ですから、同じ価格帯を行ったり来たりするレンジ相場などでは、あまり目安になりづらいです。
下図を使って、フィボナッチ・リトレースメントを使った基本戦略について解説します。

まず、長い横ばい状態(水色矢印)から上昇トレンドが発生しました。けれど、上昇は続かず、赤い丸のところでいったん価格が下がってきました。
どこまで、下落するでしょうか? それを予測するためN、フィボナッチ・リトレースメントを使います。

抵抗は見せたもののフィボナッチラインの23.6%を越えて下落し、32.8%のラインも割り込みました(緑色の丸)。
そこで意識されるのが、61.8%のラインです。
価格は61.8%のラインにタッチすることなく上昇します(青色の丸)。ちなみに61.8%を割り込んだ場合、トレンドが転換する確率が高くなります。ですから、多くの人が61.8%のラインを意識しています。

32.8%のラインを越えて上昇し(ピンクの丸)、23.6%のラインも越えていきます。
32.8%と23.6%のラインのローソク足の動きを見ると、明らかにこのラインが意識されているということがわかるでしょう。
価格が起点の0.0のラインを越えたので、上昇トレンドの継続が確定しました(オレンジ色の丸)。

3-2.フィボナッチと相性のいいテクニカル

フィボナッチ・リトレースメントは、他のテクニカル分析と組み合わせることにより、さらに精度を上げることができます。基本的にフィボナッチ・リトレースメントは、大抵のテクニカル分析と相性がいいです。
私の場合は、一目均衡表の使用時に併用することが多いです。

たとえば、下降トレンド時に、一目均衡表の雲を抜けて上昇した場合、どの価格帯で抵抗があるかを測るのに使っています。
一目均衡表は雲が抵抗帯なので、雲を抜けると目安がなくなってしまいます。そこで、雲を抜けた場合フィボナッチ・リトレースメントで補っているというイメージです。

上図は、一目均衡表とフィボナッチ・リトレースメントを併用した実際のチャート画面です。一目均衡表の雲の抵抗帯と、フィボナッチラインが重なることも多く、そんなときは、よりラインの信頼性が増します。

なお、一目均衡表の見方や使い方については、以下の記事が詳しいです。雲の見方だけでも覚えておくと、トレードで成功するための強力な武器になります。一目均衡表を、これまで使ったこなかった方にとっては、きっと大きな気づきがあるでしょう。

一目均衡表の5つの指標の見方や設定方法、雲の使い方をFXを例に解説

4.FXにおすすめのフィボナッチの本やアプリ


この章では、フィボナッチを、さらに極めたい方におすすめの本や、各FX会社が提供しているフィボナッチが使えるアプリについて紹介します。

4-1.フィボナッチトレーディング (ウィザードブックシリーズ)

『フィボナッチトレーディング (ウィザードブックシリーズ) 』著者:キャロリン・ボロディン

フィボナッチを全般的に学びたいなら、『フィボナッチトレーディング』がオススメです。ここでは紹介できなかった、フィボナッチ・タイムゾーンなどにも言及され、フィボナッチ・リトレースメントとの連携などについても解説されています。

4-2.FXフィボナッチ対応アプリ(手動・自動)

各FX会社が提供しているアプリには、多くの場合フィボナッチ・リトレースメントのラインを引くことができる機能が付随しています。手動で引くものや自動的に描画するものまで、その会社によって機能が違います。参考までに、どのFX会社が、どのようなフィボナッチ・リトレースメントの機能を備えているソフトを提供しているのかを、まとめてみました。

手動でフィボナッチラインを引けるソフトを提供しているFX会社
オアンダ ジャパン
GMOクリック証券
マネースクエア
みんなのFX
YJFX!

自動でフィボナッチラインを引けるソフトを提供しているFX会社
SBI FXトレード
FXプライムbyGMO

5.仮想通貨にフィボナッチは通用するか


最近話題のビットコインなどの仮想通貨でも、フィボナッチは機能するでしょうか。私見をいうと、FXや株ほどは機能しないのではないかと考えます。それは、仮想通貨に参加している投資家の質によるものです。

仮想通貨に参加している投資家の多くは、ブームに乗って取引しているほどんど相場の素人なのではないかと、私は感じています。ですから、トレンドも作られやすいし、トレンドが反転すれば一気に反対方向に行くような無秩序で非常に読みづらい相場展開です。ですから、予測もしづらい代わりに、大きく儲けられる可能性もあります。

今後、仮想通貨の相場がもっと成熟してくれば、フィボナッチ・リトレースメントをはじめとしたテクニカル分析が有効になることも考えられますが、現状では目安程度にしか使えないことも多いでしょう。