酒田五法とはローソク足に必須の知識|チャートパターンや勝率、本を解説


酒田五法(さかたごほう)とは、江戸時代に相場の神様といわれた、本間宗久によって考案された、ローソク足の並びで将来の値動きを読み解くテクニカル分析のことです。酒田憲法とも呼ばれています。

この記事では、酒田五法を使って実際に利益を上げてきた著者が、酒田五法の成り立ちや、勝率などについて解説。さらに、実際にどのようなチャートパターンが、株式やFXなどの相場に有効かを検証していきます。また、酒田五法を知りたい方のために、オススメの本も紹介します。きっと酒田五法を学べば学ぶほどに、その奥深さを感じることでしょう。

1.酒田五法とは?FXにも株でも覚えて損はない


この章では、まず酒田五法がどうやって生まれたのかについて解説します。その歴史を知るだけで、酒田五法の奥深さの片鱗を知ることができるでしょう。その後、酒田五法の勝率についての考え方にも言及します。これを知らなければ、安易な数字に騙されてしまうこともあるでしょう。

1-1.酒田五法とは?相場の神様|本間宗久

本間宗久は、1724年に出羽国庄内(現在の山形県酒田市)で誕生しました。彼の生まれた家は、当時、日本一の大地主で、「本間さまには及びもないが、せめてなりたや殿様に」とうたわれたほどです。つまり、超お金持ちのボンボンだったわけです。

そして、本間宗久は20代の頃、酒田の地で米相場の研究をはじめ、大きな利益を上げました。その利益で今度は、大阪に出ます。大阪には堂島市場があり、取引規模は当時日本一で酒田とは比べものになりません。本間宗久は、その堂島市場でも巨額の富を築き、「出羽の天狗」と称されました。その後、当時、取引所が5つもあった江戸でも売買を展開し、空前の利益をあげたとされています。

その本間宗久が書き記した文献『本間宗久翁秘録』が、現在に伝わる酒田五法のもととなっているといわれています。ただし、原著にはローソク足などは描かれておらず、すべて文字で書き表されています。

1-2.酒田五法の勝率は?

相場は、人間が売買することで動いているものですから、その値動きは人々の欲望や恐怖心、そして狼狽などによって作り出されています。つまり相場の値動きは、人間の心理を表したものだということもできるのです。そこに、ある一定の法則があっても、何ら不思議はないでしょう。それは江戸時代の米相場であっても、現代の株式相場や為替市場においても、相違の大小はあれど、共通する部分は多いと考えられます。

けれど、酒田五法にはいくつかのパターンがあり、それらを一括りにして勝率を決定するは難しいし、あまり意味があることとも思えません。また、酒田五法には現在の相場では目にしない、米相場ならではのローソク足の並びもあります。重要なのは、酒田五法のどの手法が現在の相場に当てはまり、有効性があるのかを実際の相場で検証してみることです。

2.酒田五法のチャートパターン一覧表


上記でも少し書きましたが、私は酒田五法のこのチャートパターンが、勝率何パーセントということは言いません。そう書けば、嘘になってしまうからです。チャートパターンが当てはまるかは、どんな金融商品か、どんな時期なのか、また市場全体のムードなどによって変化します。

ですから、ある時期を見ればこの金融商品で酒田五法を使えば勝率100パーセントに近くなるということもありますし、逆に全く機能しない場合もあります。ただ、酒田五法は長年研究されてきた統計の結果です。統計的にはこうなる可能性が高いということは確実で、売買判断を補完するものという意味ではとても有効です。

2-1.酒田五法1|三山(さんざん)


酒田五法で最も有名なのは、三山といっても過言ではありません。上図のように、3回高値の突破を試したけれど、押し戻され山を3つ作った状態を三山と呼びます。3回も高値突破を試したなら、もう無理だろうという群衆心理を表しているといえるでしょう。三山を作った後、直近の安値を割り込めば、大きく下落する傾向があります。特に、3つの山の真ん中が高いものは三尊と呼ばれ、より信ぴょう性が高くなります。海外では「ヘッドアンドショルダーズトップ」や「トリプルトップ」などと言われています。

2-2.酒田五法2|三川(さんせん)


三山と同じくらいメジャーなのが、三川です。上図のように、ちょうど三山と逆の形で、3回も下値を試したが押し戻されたことから、これ以上下落することはないだろうという、群衆心理を表しているものといえるでしょう。特に真ん中の谷が一番深いものを、逆三尊と呼び、上昇が近いことをより強く示唆します。海外では、「ヘッドアンドショルダーズボトム」や「トリプルボトム」と呼ばれます。

2-3.酒田五法3|(さんくう)


三空の「空」とは、相場の勢いが強く、値が飛んでチャート上に隙間ができることを指します。このチャート上の隙間は、「窓」とも呼ばれます。3回も窓を空けて上昇(下降)したのだから、これ以上は買い(売り)は続かないだろうということで、三空を作った後は、反対の方向に行く傾向があります。

2-4.酒田五法4|三兵(さんぺい)


相場の安値圏で、連続して3つの陽線が出た状態のことを赤三兵といい上昇のサインと見ることができます。反対に、高値圏で連続して3つの陰線が出た場合は三羽烏と呼ばれ、下落のサインになります。

2-5.酒田五法5|三法(さんぽう)

最後に三法です。投機には売り、買い、休むの三法ありといわれます。つまり、三本もんだ後に上下いずれかに抜ければ、その方向に行きやすいということです。たとえば、あるレンジ内を3本行ったり来たりしたのち、4本目でレンジを上抜ければ、上昇傾向が強いと読み解くことができます。

以上が酒田五法です。一般に言われている酒田五法はローソク足の並びをもっと細かく分類して、相場の将来予想をする方法も含まれています。その詳細は以下の記事に譲ろうと思います。

ローソク足とは|一生使える見方・使い方や予測するためのパターンの読み方

3.酒田五法はFXや株式で本当は使えない?勝率は?


酒田五法は、人間心理を反映したローソク足の動きを分析して、作り出されたものです。ですから、ある一定の普遍性があるというのは一つの真実ですが、もう一つあなたに伝えておかなければならないことがあります。

それは、酒田五法が生み出された米相場の時代や昭和の株式相場の時代と、現在とでは環境が変わってきているということです。どういうことかというと、かつては、いちいち取引所に注文を出さなければ売買が成立しませんでしたが、現在はマウスのクリック一つで取引が成立します。また、個人でもザラ場の状況やリアルタイムの値動きなども、手軽に見ることができます。そして、外国為替を扱うFXは言うに及ばす、日本の株式相場では国内のみならず、米相場とは比べものにならないくらいの巨大な資金を持った世界中の投資家が参入してきています。

こうした環境の変化は、何らかの形で相場の値動きに変化をもたらします。また、AIの自動取引なども、相場に影響を与える要因の一つで、今後ますますその影響は大きなものになってくると考えられます。

例えば、かつては典型的な買いサインであった三川が出た際、ネックラインを超えたあたりで教科書通り買い注文を出したとします。けれどこれが上昇につながらず、逆に下げてくるようなパターンが近年多く見られるようになりました。

その要因の一つに情報の氾濫で、酒田五法などを知る機会が多くなり、あまりに多くの個人が型にはまった同じ動きをするものだから、それを利用して一儲けしてやろうと考える輩の台頭が挙げられるでしょう。それは投機筋なのかもしれませんし、AIかもしれません。こうした場合、人間心理を反映していない不自然なチャートになりがちです。ですから、今後はAIがどういう動きをしているのかまで読み解くような、戦略が必要になってくるでしょう。

しかし、こうした状況であっても、まず酒田五法を知らなければ、現在の値動きは酒田五法を崩しにきているものなのか、そうでないのかということがわかりません。そうした意味で、スタンダードな型や値動きを知ることには意味があります。

4.酒田五法でFX1分足スキャルピング|時間足では有効?


そもそも酒田五法は、日足(ひあし)で機能するものです。なぜなら、酒田五法が開発されたのは江戸時代の米相場の時代で、その頃に分足や時間足などはなかったため、日足よりも短い足で使うのは想定外の使い方だといえるからです。ただし、本間宗久は半日足(前場・後場に分けて1日の取引を2つのローソク足で表す)も重視していました。そうした意味では、日足よりも短い足で使ったとしても有効性が確認できる可能性も高いと言えます。

例えば、三山など、誰もが知ってるチャートパターンは、1分足や5分足などでも注目され、売買の目安にされることが多いです。また、どんなテクニカルにでも言えることですが、1分足よりは5分足、分足よりは時間足の方が、酒田五法が機能することが多いです。

MT4のインジケーターで、酒田五法のチャートパターンを検出して表示してくれるものもあります。こうしたものを使って、自分が中心に取引している金融商品や主に使っている足で、どれだけ酒田五法が当てはまっているかを、まず検証してみることがとても重要です。もちろんこれは、目視でも構いません。自分の目でチャートパターンを探すことでしか、見えて来ない世界もありますから。

5.酒田五法をさらに学ぶのにおすすめの本|マスター編


酒田五法は、その有効性云々よりも、かつてどのような方法を取り、大成功を収められたかということが書かれた戦略書と考えることもできます。例えば、戦国時代に豊臣秀吉がどういう策を用いて天下を統一したかや、関ヶ原の戦いで勝利を分けたのは何が要因だったかといったことは、現代社会においても大いに参考になります。

私は、酒田五法を単純に盲信するのではなく、上記のように歴史の成功者から学ぶ一つの機会と捉え酒田五法と向き合うと、よりあなたのためになると考えます。ここでは、そうした視点から、酒田五法を学ぶための2冊の本を紹介します。なお、この2冊はこの記事を書くにあたっても、大いに参考にさせていただきました。この記事以上に、酒田五法のことを知りたいなら、マスター編として、ぜひ以下の2冊を読んでみてください。

5-1.『酒田五法は風林火山―相場ケイ線道の極意』

昭和43年に日本証券新聞社によって出版された、酒田五法の教科書とも言える本です。基本的にはローソク足の並びから、相場の今後を予測する方法について記述されています。用語解説や、本間宗久の相場哲学なども紹介されています。古い本で専門用語も多く出てきますが、酒田五法を一通り学びたいなら、読んでおいて損はないでしょう。

5-2.『定本 酒田罫線法』

どちらかといえば、酒田五法の研究書といった趣が強い本で、最初は読みづらく感じるでしょう。けれど、酒田五法の奥深さを感じたいなら、断然この本をオススメします。ローソク足の並びやパターンのみならず、「どこで買いを入れるのか」「どこで利益確定をすればいいのか」を酒田五法では、どう考えているのかといったことまで解説されています。