移動平均線とは|FXでの使い方や設定値と厳選した手法をわかりやすく解説


移動平均線とは、設定した期間の株やFXの終値を平均化して線で示したグラフです。FXはもちろん、株式相場や商品相場でも、トレードする際に非常に有効な目印になります。

移動平均線をきちんと知ることで、今どこに相場が向かっているのかの把握や、今後、価格が上がるのか下がるかの予想が立てやすくなります。移動平均線について知っている人も、知らない人もぜひこの機会に、移動平均線の正しい知識を身につけてください。

なお、この記事では、便宜上FXを中心に解説していますが、株式などのチャートを使うものになら何にでも応用できます。

1.移動平均線とは|主要な移動平均線の種類は3つ


一度覚えれば、相場の今後の予測を立てるのに大変有効な移動平均線。とはいえ、一口に移動平均線いっても様々な種類が存在します。代表的な移動平均線は、主に3つです。ここでは、まず、移動平均線とはどういうものなのかを説明し、目的に応じた移動平均線の種類について説明します。

1-1.移動平均線とは|FXでも株でも考え方は同じ

移動平均線とは、はじめに説明したように、ある期間の相場の終値を結んで線形にしたものです。なぜ、こんなことをする必要があるのでしょう? 過去の終値を平均化して結んでも、あまり意味がないように思えます。しかし、移動平均線を実際に見てみるといかがでしょう?

ローソク足だけを見ている時よりも、相場の傾向が見えてきませんか? そうです、移動平均線を表示することで、現在どの方向に相場が向かっているのかが、視覚化でき把握しやすくなるのです。

でもそれだけなら、「ローソク足だけを見ていても、なんとなく相場がどちらに向かっているのか、わかるんじゃないな」とあなたは考えるかもしれませんね。でも、移動平均線には、それ以上の価値があるのです。なぜなら、世界の多くの人が移動平均線を表示して、取引しているからです。

例えば、テクニカル指標を用いて取引している投資家でも、ボリンジャーバンドやRSIといったインジケーターを使わないという人はいるかもしれません。しかし、移動平均線だけは、ほとんどの投資家が用いています。おそらく、世界で最も使われているテクニカル指標の一つということになるでしょう。多くの人が移動平均線を見ているということは、移動平均線が指し示す方向に相場が動きやすいということになります。

では、移動平均線の3つの種類を、順番に見ていきましょう。

1-2.単純移動平均線の計算式

まず、単純移動平均です。一定期間の終値を単純に平均化して作られているのが、単純移動平均線です。その名のとおり単純です。計算方法を、3日の期間をとった移動平均線(通常は3日は使いませんがわかりやすくするため)で説明しましょう。

例えば、ドル円の価格が、

1日目の終値 112.50
2日目の終値 112.80
3日目の終値 112.60

だったとすると、この3日間の数値をすべて足して、3で割ればいいわけです。
つまり、

(112.50+112.80+ 112.70)÷3=112.63

となり、移動平均線に書き込まれるその日の値は112.63となります。その翌日の終値が、112.90だったとしましょう。そうなると、3日の終値を平均化しているのですから、前回の計算に含めた1日目の終値は、今回に計算には含みません。
つまり、

(112.80+112.60+ 112.90)÷3=112.76

となり、112.76という値が移動平均線に反映されます。
この場合、ある一定の期間を3日に設定した場合ですが、5日以上の期間を取ることが普通です。しかし、考え方は5日であろうと、100日だろうと同じです。

1-3.加重移動平均線の計算式

加重移動平均線は、単純移動平均線のように全ての価格を同等に見るのではなく、直近の価格に近いものほど、意図的に重要度を大きくしています。なぜこんなことをするのかというと、直近の価格ほど、より今後の価格に影響しやすいからです。

例えば、100日の単純移動平均線であれば、100日前の価格も昨日の価格も同様に扱われます。でも、はるか100日前の終値が、今日の相場の値動きに影響する割合はわずかです。それよりも、直近に付けた終値の方が、現在の値動きにより大きく影響するでしょう。このような考えから、より近い日の価格をより重要視して計算したのが加重移動平均線です。
3日の移動平均線を例にすると、計算方法は以下になります。

((今日の終値×3日)+(前日の終値×(3日−1日))+(前々日の終値×(3日−2日)))÷(3日+2日+1日)

つまり、3日移動平均線ですから、当日の終値には3日を掛けます。前日の終値には、3日から1日マイナスして、重要度を下げているわけです。前々日はさらに2日をマイナスします。この考え方は、移動平均線の日数が多くなっても同じです。例えば、20日移動平均線なら、20日前の終値は19日引かれた数になります。このようにして、単純移動平均よりも、直近の価格に重点を置いた分析ができるようにしているのです。

1-4.指数平滑移動平均線の計算式

上記で説明した、加重移動平均線よりも、さらに直近の価格を重視した移動平均線が、指数平滑移動平均線です。そして指数平滑移動平均線には、それ以外にも特徴があります。例えば、単純移動平均線や加重移動平均線では、たとえば、期間が100日の移動平均線であれば、100日より以前の終値は完全に無視されてしまいます。しかし、指数平滑移動平均線では、平滑化定数を使うことにより、100日以前の終値の影響も取り込んで、反映することができます。

計算方法を、3日移動平均線で見てみましょう。

例えば、ドル円の価格が

1日目の終値 112.50
2日目の終値 112.80
3日目の終値 112.60

だったとすると、

(112.50+112.80+ 112.70)÷3=112.63

と計算します。ここまでは単純移動平均線と全く同じです。

しかし4日目以降は以前の価格を取り込むために、平滑化定数を使います。
4日目の終値が112.70だったとすると計算は以下のようになります。

112.63(前日の移動平均)+0.5(平滑定数)×(112.70(当日の終値)-112.63(前日の移動平均))=112.665

つまり、移動平均線に反映される数値は112.665となります。

※平滑定数は、2÷(設定した期間−1)で算出します。上記の場合だと3日移動平均なので
2÷(3日−1)=0.5となっています。

誤解のないように、5日目の移動平均も算出してみましょう。

5日目の終値が112.80であれば、

112.665(前日の移動平均:EMA)+0.5(平滑定数)×(112.80(当日の終値)-112.665(前日の移動平均:EMA))=112.7325

つまり、移動平均線に反映される数値は、112.7325となります。

1-5.移動平均線の英語名と略し方

移動平均線を英語にすると、「Moving Average」です。上記で紹介した3種の移動平均線には、それぞれ英語名を基にした略称が存在します。これはよく使われるので覚えておきましょう。

■単純移動平均線 
英語名「Simple Moving Average」 
略称「SMA」

■加重移動平均線
英語名「Weighted Moving Average」
略称「WMA」

■指数平滑移動平均線
英語名「Exponential Moving Average」
略称「EMA」

特に、SMAとEMAはよく使われるので、覚えておいて損はないと思います。また、単に移動平均を表す言葉として、「MA」と呼ばれることもよくあります。

2.FXの移動平均線の見方・使い方


1章では、3種の移動平均線について紹介しました。でも、どの移動平均線を使うといいのでしょうか? 

単純移動平均線(SMA)は、数理的には移動平均を正確に表していると言えますが、過去の終値を平等に扱っているため、直近の値動きに対して、反応が遅れるという欠点があります。一方、より直近の価格を重視している指数平滑移動平均線(EMA)は、直近の価格への反応がスムーズです。加重移動平均線(WMA)は、その中間ということになるでしょう。

日本では特に初心者の間で、単純移動平均線(SMA)が使われる傾向がありますが、世界的に見てより多くのトレーダーが使用しているのは、指数平滑移動平均線(EMA)です。参加する相場ごとに、よく検証する必要はありますが、EMAが移動平均線の中でも様々な相場に適応しやすい指標であることは事実です。そこで、この記事では指数平滑移動平均線(EMA)を用いて説明していきます。

2-1.移動平均線の見方|MT4で見てみよう

では、MT4のユーロ/ドル日足チャートに、移動平均線を表示してみましょう。これで、一体何がわかるのでしょうか?

まず、移動平均線で相場を分析する際の基本は、移動平均線の傾きです。斜め上に傾いているでしょうか? あるいは斜め下に傾いているでしょうか? この傾きが急であればあるほど、相場に勢いがあることを示します。

また、価格(ローソク足)が、移動平均線より上にある状態をブル(牡牛という意味)といいます。価格(ローソク足)が、移動平均線より下にある状態をベア(熊という意味)といいます。ブルは雄牛が角を下から上へ突き上げることになぞらえて、相場が上昇していることを表わしています。ベアは熊が前足を振り下ろす姿になぞらえて、相場が下落している状態を表します。

つまり、価格が移動平均線より上にあるブルの状態なら、相場全体が強気なので買いから入る方が勝率が上がります。反対に価格が移動平均線より下にあるベアの状態なら、相場全体が弱気なので、売りから入ったほうが負けづらくなります。この基本を抑えてトレードするだけでも、投資のパフォーマンスはかなり向上するでしょう。

2-2.移動平均線の設定|おすすめの期間や数値(設定値)

移動平均線でよく使われる数値は、
5、10、13、14、20、21、25、26、40、50、52、64、75、89、90、100、144、200
です。

週足の移動平均線で一般的に使われるのは、13、26、52、200といった数値です。
200日移動平均線は、有名なグランビルの法則で基となったものなので、特に週足では重要な目安になります。ただし、期間が長すぎて短期のトレードにはあまり向きません。しかし、短期トレードをするにしても、大きな流れを見るという意味で意識しておくといいでしょう。

日足などでの短期トレードでは、5日が基本の数値になります。なぜなら、5日移動平均線は、そのまま1週間の値動きを反映するからです。5日を基本にして、10日(2週間)、20日(1ヶ月)と考えて設定すると、わかりやすくなります。しかし、私の経験上、日足では、21日移動平均線や75日移動平均線が目安になりやすいです。

とはいえ、これはその時の相場にもよるので、チャートを眺めながら、ここに書いたことを参考にして、あなたが最適だと思える数値を探してみることをおすすめします。数値を変えると、意外な発見があるかもしれませんよ。

2-3.スキャルピングに移動平均線は使えるか?

前項では、一般的な取引においての移動平均線の数値を解説しましたが、もっと展開が早いスキャルピングやデイトレで最適な数値はあるでしょうか。私の考えでは、1分足や5分足で移動平均線を目安にトレードするのは、ナンセンスだと感じます。なぜなら期間が短すぎて、より多くの人の意思を反映できないと考えるからです。

それでも、移動平均線が全く機能しないわけではありません。ではどういう数値を入れたらいいのかといえば、やはり、より多くの人が使いそうな数値を入れるべきです。前項で紹介した、5、10、13、14、20、21、25、26、40、50、52、64、75、89、90、100、144、200といった数値ですが、私があえてスキャルで目安として使うなら、5、13、21あたりを入れるでしょう。ただし、スキャルピングを主とした超短期トレードで使うなら、目安程度に考えることをおすすめします。

2-4.複数の期間の移動平均線を組み合わせる

移動平均線は、一つの期間だけを入れて使うよりも、様々な期間を組み合わせて使ったほうがより有効に活用しやすいです。例えば、1本目は21日移動平均線、2本目は75日移動平均線といったようにです。その具体的方法について、次章で解説します。

3.移動平均線の組み合わせを使った手法|大循環分析

複数の移動平均線を使った分析法の代表格が、大循環分析です。それほど複雑でもなく、一目で相場の状況を把握できるのでおすすめの手法です。

3-1.移動平均線大循環分析とは|短期・中期・長期位置を見る

移動平均線大循環分析とは、3本の移動平均線(短期・中期・長期)の位置関係で、現在相場がどのような状況にあるかを把握することで、今後価格が上昇しやすいのか、あるいは下降しやすいのかを分析する手法です。

具体的には、短期、中期、長期の移動平均線の位置関係を見て、現在の相場状況を把握するのです。例を挙げると、短期の移動平均線を21日移動平均線、中期の移動平均線を52日移動平均線、長期を72日移動平均線にして、それぞれの移動平均線が相対的にどの位置にいるかを見るのです。

では、短期、中期、長期の位置で何がわかるのでしょうか? それぞれの移動平均線が、上から「短期、中期、長期」の並びになっていれば、安定して上昇している状況といえます。また、「中期、短期、長期」の並びになると、そろそろ上昇トレンドが終わるというサインになります。そして、「中期、長期、短期」の並びなら、これから下降トレンドが始まる可能性が高いということになります。

先ほどとは反対に、「長期、中期、短期」の並びになると、安定して下降している状況を示します。「長期、短期、中期」の並びなら、下降トレンドの終わりのサイン、「短期、長期、中期」の並びになると、上昇トレンドの始まりの目安になります。

上記をまとめると以下のようになります。
・短期、中期、長期:安定して上昇している状況
・中期、短期、長期:そろそろ上昇トレンドが終わる
・中期、長期、短期:下降トレンドの始まり
・長期、中期、短期:安定して下降している状況
・長期、短期、中期:そろそろ下降トレンドが終わる
・短期、長期、中期:上昇トレンドの始まり

3-2.FXの動きを移動平均線3本で見極める

移動平均線大循環分析を使ったトレードでは、基本的に「安定して上昇している状況」「安定して下降している状況」の時のみトレードをします。なぜなら、それ以外の状況は、相場が迷っているということなので、ダマシも多く、現状を正確に把握するのは困難だからです。

3本の線が「安定して上昇している状況」「安定して下降している状況」の並びになっているときに、その移動平均線の傾きにも注目してみてください。3本の線がそろって上向き(あるいは下向き)なら、より強いサインになります。逆に言えば、こういう状況のみにトレードするのが、基本戦略の一つです。

4.移動平均線を使った手法|乖離率

相場というものは、基本的に移動平均線を中心に動いています。つまり、価格(ローソク足)が上昇して移動平均線を上抜けても、時間の経過とともに移動平均線に近づいてきます。価格(ローソク足)が移動平均線よりも下降した場合も同じです。移動平均線が、重力のような働きをして、価格は移動平均線に近づいていくのです。

4-1.移動平均線乖離率とは

価格が移動平均線に引き付けられるなら、移動平均線から大きく離れて上昇したり下降した価格は、再び移動平均線まで戻ってくるのではないか。こうした考えでトレードするときに、指標となるのが移動平均線乖離率です。

移動平均線乖離率とは、価格が移動平均線からどれくらい離れているかを数値化したものです。かつてジェイコム株で大儲けをして一躍有名になった、「ジェイコム男」こと個人投資家のB・N・Fさんも、乖離率を指標にトレードしていたといわれています。

4-2.移動平均線の乖離率を計算した投資法

移動平均線乖離率は、以下の計算式で簡単に算出できます。

移動平均線乖離率=((当日の終値−移動平均値)÷移動平均値)×100

20日前後の移動平均線の場合、一般的に+10%以上で売り、−10%以下で買いと判断します。つまり、移動平均線乖離率を算出して、+10%以上になれば売りポジションを持ち、−10%以下なら買いポジションを持つということですが、単純に移動平均線乖離率のみで、トレードするのは危険です。大循環分析や他のテクニカルと組み合わせて、総合的に判断してトレードすることをおすすめします。

4-3.移動平均線の乖離率を測るインジケーター

移動平均乖離率の示すインジケーターも、もちろん存在します。MT4であれば「Kairi.mq4」が有名です。「Kairi.mq4」は以下からダウンロードできます。

「Kairi.mq4」ダウンロードページ

5.移動平均線を使った手法|ゴールデンクロス

ゴールデンクロスとは、2本の移動平均線の位置関係を売買サインとして取引する手法です。上記で紹介した大循環分析よりも、さらに単純な指標なだけに、多くのトレーダーが知識として持っていると考えても差し支えないでしょう。

5-1.移動平均線のゴールデンクロスで売買

短期の移動平均線が、中期あるいは長期移動平均線を下から上に突き抜けてクロスした状態を、「ゴールデンクロス」と呼び、買いのシグナルと判断します。反対に、短期の移動平均線が、中期あるいは長期移動平均線を上から下に突き抜けてクロスした状態を、「デッドクロス」と呼び、売りのシグナルと判断します。

例を挙げると、「21日移動平均線」と「75日移動平均線」の2つの移動平均線を表示して、21日移動平均線が75日移動平均線を下から上に突き抜けたら買い、21日移動平均線が75日移動平均線を上から下に突き抜けたら売りと判断してトレードします。

5-2.ゴールデンクロスの勝率は?だましも多い

ゴールデンクロスとデッドクロスは、単純なだけにダマシも多い指標です。大数の法則で、売買を続ければ続けるほど、勝率は5割に近づいていきます。しかし、ゴールデンクロスのみを使用してトレードを続けると、バイアスがかかり勝率は5割を下回るというデータもあります。

6.移動平均線だけで利益を上げるのは可能か?


この記事では、移動平均線について詳述しました。これを読んで、どんな感想を持たれたでしょうか。恐らく移動平均線1つとっても、奥が深いと思われたのではないでしょうか。そう感じたなら、あなたの感覚は正しいです。

多くのトレーダーは、移動平均線やその他のテクニカルの売買サインなど、表層的な情報のみでトレードしています。でも、それが何に基づいて算出されたサインなのかということを知るのは、大変重要です。指標の使い方一つとってみても、深く知ることが、トレードの精度に関わってきます。

移動平均線も深く知ることで、トレードの精度を上げることは可能です。また、移動平均線には様々な使い方があり、それらを組み合わせて考えることにより、さらに精度をあげていくこともできますし、移動平均線のみを使って利益をあげていくことも可能です。

あなたがFXや株式で、テクニカル指標を使ってトレードしたいと考えているなら、まずここで紹介した移動平均線をよく理解することが一番の近道です。ぜひ、本当に理解できるまで、この記事を何度も読み返してみてください。あなたが移動平均線に熟達し、本当に自分に合った移動平均線の使い方や数値を見出すことができれば、それが骨格となって今後のトレードを実りあるものにしてくれるでしょう。

なお、いくら移動平均線を理解したとしても、投資の基本ができていない限り、続ければ続けるほど、最終的には損失がふくらんでいくはずです。そうならないためにも、まずは損切りを正しく理解しておくといいでしょう。知っているつもりだけど、多くの人は上手くできない損切りの本質を知れば、結果的にあなたの資産を守ることになりますので、ぜひ以下の記事を参考にしてみてください。

損切りとは?本当の意味や株・FXでの目安やタイミング、ルール設定を解説

また、移動平均線に関連した記事として、以下の記事も参考にすることをおすすめします。物事を深く知ることがあなたの資産を守ることにつながっていくでしょう。

グランビルの法則の秘密|何日の移動平均線使うと有効?株やFXで使えない?