グランビルの法則の秘密|何日の移動平均線使うと有効?株やFXで使えない?


グランビルの法則とは、FXや株などの相場において、移動平均線と実際の価格(ローソク足)の位置や組み合わせにより、売買のタイミングをはかる手法一つです。株式相場やFXなど、チャートを使う取引で有効とされています。この法則は、移動平均線の考案者自らが提唱したものになります。そう聞くと何やらすごい法則のように思えてきますが、実際はどうなのでしょう? 

この記事では、グランビルの法則の考え方や実践的な取引手法の詳しい解説や、50年以上も前に考案されたグランビルの法則が、今現在のFXや株式相場において、本当に機能するのかについて考察します。たとえあなたが、グランビルの法則に全く興味がなくても、相場は遥か昔に作られたこの法則に少なからず影響を受けています。ですから、この記事で一度はチェックしておいて損はない知識といえるでしょう。

1.グランビルの法則とは|FXでも株でも基本となるサイン


グランビルの法則は、その性質上、FXや株式などのチャートを使う取引であれば、あらゆる相場に適応できると言っても過言ではありません。なぜかといえば、チャートを使う市場参加者の多くは、グランビルの法則を知識として持っており、そのため相場の値動きは、しばしばこの法則にとらわれているかのように振る舞うからです。

そこで、この章ではFXや株式などの相場において、「強い影響力を持つグランビルの法則とは一体何なのか?」「どんな根拠に基づいて考案されたのか?」について解説します。また、考案者がどんな人物だったのかという真実もお伝えします。この章を読むとグランビルの法則について、あなたが持っている印象が変わってくるかもしれませんね。

1-1.グランビルの法則とは|意味や由来を解説

はじめにでも紹介したように、グランビルの法則は、チャートに移動平均線を表示させ、実際の価格との位置関係を目安に取引するものです。そのパターンはたった8つ。それぞれのパターンについては次章で詳しく説明します。

しかし、移動平均線にしろ、グランビルの法則にしろ、その根拠は一体何でしょうか? 

 移動平均線は様々な種類はあるものの、基本的には過去の価格を平均して、グラフにしたものにすぎません。それが今後の相場の動きを知るのに何の役に立つのか、冷静に考えれば少し疑わしくなってきませんか? また、その単なる平均を示した線に相対して、価格が現在どの位置にあるのかということが、今後の価格予想において本当に有効に機能するのでしょうか? 

これらの問いに答えるために、考案者であるジョセフ・E・グランビルについて、少し説明しておく必要がありそうです。

1-2.ジョセフ・E・グランビルとは何者?

グランビルの法則を考案したのは、ジョセフ・E・グランビル(Joseph E. Granville)。日本でいえば関東大震災が起こった大正12年、西暦でいえば1923年に生まれた人で、2013年9月に亡くなられました。グランビルの法則の考案者と聞くと、どんなすごい学者なのかとあなたは思っているかもしれません。

しかし、グランビルは一介の金融記者に過ぎません。マーケットレターを発行したり投資セミナーを開催したりして、それを生活の糧にしていました。けれど、彼のマーケットレターは、1年で平均20%以上の損失を出しています。また、ある経済誌の投資パフォーマンスの順位表では、過去25年以上にわたってほぼ最下位でした。

けれど、彼には才能がありました。皆を楽しませる才能です。グランビルは投資会議において参加者の意表をついて棺桶から出てきて注目を集めたり、顧客と会うときにプールの上を歩いているかのように見えるパフォーマンスをして喜ばれていたそうです。

これらの情報のみで推察すると、グランビルは、日本でいえば、投資の予想は全然当たらないけれど、いつも愉快なパフォーマンスをしてくれる人気アナリストといったところでしょうか。

1-3.グランビルの法則は本当は使えない?

法則と聞くと、何をイメージするでしょうか? オームの法則やニュートンの運動法則を思い浮かべるかもしれません。そうです、多くの人は自然科学の定理や、数式のようなものを連想するでしょう。でも、そこに言葉の罠(思い込み)があります。

グランビルの法則は、科学でも何でもなく、極端にいえば、ただ単にこういう傾向があるかもしれないと、素人が適当に作った表に過ぎないのです。さしずめ、「グランビルさんが思い描いた相場の傾向」程度のものです。

じゃあ、グランビルの法則なんて全く役に立たないじゃないかと、あなたは思うかもしれませんね。でも、それも正解ではありません。なぜなら、この科学でもなんでもない「グランビルさんが思い描いた相場の傾向」を、科学と同じもののように捉えて、取引している人が世界中に大勢いるからです。

たとえ、疑わしいものでも多くの人が信じれば、世界はその通りに動いていきます。相場においても、それは同じです。そうした意味で、グランビルの法則を知れば、多くの人が何を考えて取引しているのかを知ることができます。多くの人が信じているのですから、時にはグランビルの法則通りに動くこともあるのです。

ですから、グランビルの法則を知識として知っておくことは、投資する上でプラスになるでしょう。ただし、これをオームの法則やニュートンの運動法則のように絶対法則だと信じて、トレードするのは危険なことです。それだけは、理解しておいてください。

実は、当たり前のように使われているテクニカル分析には、このような話がゴロゴロしています。よくよく考えれば、金融に関する学問というもの自体が、まるで科学のように振舞っていますが、全く科学的ではないことで溢れています。

ここで話したことにより、あなたが色眼鏡を一つ外せたなら、それは現実や相場を冷静に見る契機なるでしょう。そして、曇りがひとつ取れたなら、それは投資のパフォーマンスにもつながっていきます。相場でも人生でも、大切なのは鵜呑みにせず、自分自身で考えることに他ならないからです。

2.グランビルの法則8つのサインのすべて


1章では、グランビルの法則の根拠自体はとても怪しいことを書きましたが、それでもグランビルの法則は、相場において影響力を持ち続けています。その理由は次章に譲るとして、ここではグランビルの法則とはどういうものなのか、ということを具体的に説明します。

グランビルの法則には、4つの買いサインと4つ売りのサインの合計8つのサインがあります。ここでは、その8つのサインについて説明します。なお、先にもお伝えしたように、一般的なグランビルの法則は、全て移動平均線とローソク足などの価格との位置関係により、売買タイミングを計るものです。そのつもりで、読み進めてください。

2-1.グランビルの法則1番(買いサイン)

まず移動平均線の傾きに注目してみましょう。移動平均線の傾きが長い間右肩下りだったのに、横ばいになってきたというのが第一条件です。そして価格(ローソク足)が上昇に転じて、移動平均線より上に出たら、買いのサインとみなします。

2-2.グランビルの法則2番(買いサイン)

価格が移動平均線の上にいたのに、どんどん下がってきたとします。そしてとうとう、移動平均線を下抜けました。そんな時でも、移動平均線が右肩上がりの状態なら、反発する可能性が高いとみなします。これは、移動平均線を目安に取引している人たちが、割安だと考え押し目買いが入るためだと考えられます。

2-3.グランビルの法則3番(買いサイン)

移動平均線の上にいる価格が、横ばいを続け移動平均線に近づいてきたけれど、移動平均線の下にいくことなく、上昇するという状況は、強い買いサインとみなされます。このような状況なら、トレンドを形成している可能性があり、上昇する見込みが高いです。

2-4.グランビルの法則4番(買いサイン)

移動平均線が右肩下がりの際に、さらに価格が下落し大きく移動平均線を離れた場合、反発する可能性が高いとされます。これは、下がり続ける相場はないという考えからのものでしょうが、トレンドが生まれている場合、さらに下がり続けることもあります。

2-5.グランビルの法則5番(売りサイン)

ここからは売りサインですが、基本的にグランビルの法則1〜4番と対称的な取引になります。念のため一つ一つ見ていきましょう。
右肩上がりだった移動平均線の傾きが横ばいになり、価格が移動平均線の下まで下落した時は、売りのサインとされます。

2-6.グランビルの法則6番(売りサイン)

移動平均線が右肩下がりの際に、価格が上昇して移動平均線を下から上に突き抜けたとしても、移動平均線の傾きが右肩下がりを維持しているなら、まだ売りの勢力が強いと考えられるので、売りサインとされます。

2-7.グランビルの法則7番(売りサイン)

移動平均線が右肩下がりの際、価格が移動平均線に近づいてきたものの、移動平均線の上に出ることができずに下落した場合は、強い売りサインとされます。このような状況の場合は、下降トレンドが生まれている可能性があります。

2-8.グランビルの法則8番(売りサイン)

移動平均線が右肩上がりの際に、さらに価格が上昇して、大きく移動平均線を離れた場合、反発する可能性を疑います。これは、グランビルの法則4番と同様に、上がり続ける相場はないという考えからのものでしょうが、トレンドが生まれている場合、さらに上がり続けることもあります。

3.グランビルの法則をFXで使う時の移動平均線は何日?

グランビルの法則自体の勝率が、どれくらいかということを語るのは大変難しいところです。なぜなら、何分あるいは何日のローソク足を使い、どの期間の移動平均線を使用しているかによって、その勝率は全く変わってくるからです。これらの組み合わせにはまさに無限とも言えるパターンがあります。

また、当然、その時その時の外部要因にも影響されます。例えば、明らかに上昇するようなニュースが流れている時に、グランビルの法則を信じて、反対のトレードをすれば結果は言わずもがなです。これは特に注意するべきところで、グランビルの法則は確かに機能するけれど、科学法則のように盲信してはいけないものだということです。

では、どの期間の移動平均線を使うと、グランビルの法則は機能しやすいでしょうか。その答えは、グランビルの法則を使って取引している層に、どの期間の移動平均線が使われやすいかということに他なりません。

3-1.グランビルの法則は200日移動平均線で勝率上昇?

結論から言うと、グランビルの法則が最も機能しやすいのは、200日移動平均線を使った場合においてです。これは、グランビルの法則の成り立ちから言えることです。そもそも、開発者のグランビルは、日足チャートで200日移動平均線を利用していたからです。つまり開発者の意図通りに法則を使うとしたら、200日移動平均線においてということになります。

そして、他の日数よりも200日移動平均線の方が、グランビルの法則通りに動きやすいということも事実です。その理由は、より多くの人が、200日の移動平均線を意識しているからに他なりません。

確かに、長期トレードなら、200日移動平均線を使用するのは妥当かもしれません。しかし、短期・中期トレードでは、大きな流れを掴むにはいいかもしれませんが、200日移動平均線だけで小さな値動きを追うことは困難です。

より短期の動きを捉えるために、200日移動平均線の代わりになる設定日数としては、5日・20日・21日・25日・75日あたりになるでしょう。これはより多くの人がこの日数を設定して、グランビルの法則を意識している可能性が高いということからです。

私の経験から言えば、FXなら21日移動平均線、株式なら75日移動平均線がより意識されていると感じることが多かったです。もちろんこれは、その時の相場状況によっても異なります。

3-2.グランビルの法則はFXのスキャルでも使用可?

グランビルの法則を信じて取引している人がいる限りは、スキャルピングなどの短期取引でも、この法則は目安に使用することができます。FXのスキャルピングは、利益確定ポイントと損切りのバランスが何より大切になります。どんな人でも勝ち続けることは不可能だからです。

ですから、損切りになったとしても損失が最小になり、最大の利益が見込める位置でエントリーする必要があります。もちろんこれはスキャルピングだけでなく、デイトレやスイングでも同じなのですが、そのラインがスキャルピングでは、よりタイトでシビアになります。

ということは、スキャルピングでグランビルの法則を用いるとしたら、グランビルの法則2番の買いサインや、グランビルの法則6番の売りサインでエントリーする方がやりやすいです。なぜなら2番の買いサインでポジションを取ってさらに下がったら損切り、6番の売りサインでポジションを取ってさらに上がったら損切りというふうに、損切り幅をより小さくできるからです。

移動平均線の設定値は私なら、1分足であれば短期は5本、30本、60本あたりを使用します。5分足なら、6本、36本、72にすると思います。ただ、これは私が頻繁にスキャルピングをしていた頃の数値で、現在の相場に適応するのかは定かではないことは断っておきます。

4.グランビルの法則の応用|チャートで説明

グランビルの法則は多くの場合単体でも機能しますが、さらに応用することはできるでしょうか? また、他のテクニカルと合わせて使うことによって、さらに信憑性を増すことは可能でなのでしょうか。この章ではその答えをお伝えしましょう。

4-1.グランビルの法則と相性がいいテクニカルはダウ理論

グランビルの法則より前に発明された、有名な相場理論にダウ理論というものがあります。ダウ理論の基本を美味しいところだけ、簡単に紹介すると、以下の3つになります。

上昇トレンド:高値と安値がその前の高値安値より連続して切り上がっている状態。
下降トレンド:高値と安値がその前の高値安値より連続して切り下がっている状態。
レンジ相場:同じ価格帯を行ったり来たりしている状態。

つまり、グランビルの法則と並行して、上昇トレンドや下降トレンドになっている状態も確認できれば、さらに信憑性が増すということになります。実際にMT4のチャートで説明すると、以下のようになります。青色の丸印が、高値と安値を切り上げていることがわかりますよね。これは、ダウ理論でいう上昇トレンドを築いている状態です。また、オレンジ色の丸の箇所は、グランビルの法則1番通りになっています。すなわち、移動平均線の傾き横ばいになり、価格(ローソク足)が上昇に転じて、移動平均線より上に頭を出しています。

4-2.グランビルの法則を極めるための本

多くの投資関係の本で、グランビルの法則は紹介されています。しかし、エッセンスのみが書かれたものが大半です。

でもグランビルの法則は、エッセンスさえ知れば十分使えるものです。つまり、この記事に書かれている程度の知識を持っていれば問題ないと考えます。むしろ勉強しすぎて、盲信してしまうことの方が危険しれません。

ニュアンスが伝わりづらいかもしれませんが、グランビルの法則は確かに機能しやすいので、そこに重力のようなものがあるかのように錯覚しやすいのです。利用できる時は利用し、利用できない時は利用しないという冷静さが必要なのです。

それでも、グランビルの法則について、もっと詳しく知りたいという方には、開発者自らの著書である以下を書籍をおすすめします。古書なので、手に入れるのはなかなか困難かもしれません。

グランビルの投資戦略―株価変動を最大に活用する技法 (1978年10月発刊)
著者:J.E.グランビル、八千代証券株式会社

5.おわりに


いかがでしたでしょうか。ここで書いたことが、少しでもあなたに伝わったなら嬉しいです。最後に、もう一度おさらいをして筆を置こうと思います。

かつて、あまり当たらないけれど、楽しく人気のある金融ライターがいました。彼は最もらしい移動平均線と彼の名を冠した法則を作り上げました。けれど、その法則は開発当時はそれほど機能したわけではありませんでした。それから50年の時を経て、その法則は世界中に広まっていきました。皆がその法則を信じて取引し始めました。まるで、そこに重力があるかのように。

あなたに、グランビルの法則を有効に使っていただくことを願ってやみません。

なお、グランビルの法則以上に、多くの人が目安にしている考え方があります。それが、テクニカル分析の基礎ともいえるダウ理論です。あなたが投資で儲けたいなら、大多数の人が何を基準にチャートを見ているかを知っておくことは、とても大切なことです。ダウ理論については、以下の記事で解説していますので、この機会にぜひチェックしておきましょう。

ダウ理論とは|6つの原則と使い方やFXでの取引手法を簡単にレクチャー