信用取引とは|やめとくべき?利点や危険性、追証と金利をわかりやすく解説


信用取引とは、現金や株式を担保として証券会社に預けることで、お金を借りて株を買ったり、空売りできたりする制度のことです。そのため、自分が持っている資金以上の金額の株を売買することも可能になります。

信用取引は便利なしくみである反面、使い方を間違えるととても危険な状況をまねく可能性もあります。信用取引はいわば、自分の持っている以上の力(資金)を使える制度だと言い換えることもできます。しかし、大きな力が使えるということは良いことばかりではありません。大きな力は、大きな事故をまねく可能性もあるのです。

投資は、何が起ころうと自己責任です。だからこそ、正しい知識を身につけておく必要があります。しかし、多くの個人投資家は、信用取引という大きな力に対して、きちんとした知識を身につけずに、取引していることがほとんどで、それは損失という形で必ず自分に返ってきます。それを勉強料と捉えられるのなら、構いませんが、あらかじめ学習しておいて勉強料など払わないのがベストなのではないでしょうか。

そこで、この記事では、個人投資家が知っておきべき、信用取引についての知識についてわかりやすく解説していきます。

1.信用取引とは? 株やFXのケースをわかりやすく解説


この章では、信用取引の詳しい意味やしくみについて、株式投資のケースを中心に解説していきます。また信用取引を行うための口座開設の注意点や、FXのケースについても触れていきましょう。

1-1.信用取引とは何か|レバレッジと空売り

はじめに紹介したように、信用取引では証券会社に預けた資金を担保にして、お金を借りて、預けた以上の資金で株の売買ができます。この預けた以上の資金で、株の売買ができるしくみのことをレバレッジと言います。日本の株式の場合、預けたお金の3.3倍の資金での取引が可能になります。

さらに信用取引では、株を買ってその値上がりで利益を狙うことのほかに、株を売って儲けることもできます。「株を売ってどうやって利益を得るの?」とあなたは思うかもれません。そのしくみを簡略化して説明すると、まず証券会社を通じて株を借りてきます。そして、その株を市場で売るのです。たとえば、あなたが株を借りてきたとしましょう。そして、株の市場価格が現在100円なので、100円で売ったとします。

その場合、借りてきた株を売ってしまったのですから、どこかで買い戻して株を貸し手に返さなければなりませんよね。その後、株価が下がり90円まで落ちたとします。そこで90円で買い戻して、株を返却したとしましょう。そうなると、あなたの手元には10円の利益が残りますよね。こうした取引は空売りとも呼ばれ、信用取引をすれば可能になります。

1-2.信用取引口座とは 開設には審査もある

信用取引は、一般の株式口座ではできません。必ず信用取引口座を、開設する必要があります。一般の株式口座でも審査がありますが、信用取引口座ではより厳しい審査に通る必要があります。けれど、難しく考える必要はありません。証券会社も、なるべく取引してくれる人を増やしたいというのが本音ですから、ある程度の資金と投資経験があれば、比較的容易に開設することができます。

証券会社によって異なりますが、信用取引口座の開設の条件は、投資経験1年以上、資金300万円程度を挙げていることが多いです。投資経験については、他の証券会社での経験も含まれます。虚偽の申告をしても調べようもないので、多くの場合審査に通ってしまうと思いますが、よく考えてみてください。この信用取引口座の開設の条件は、意地悪をして設けられているものではなく、未熟だったり資金を十分に持ってなかったりする投資家を守るために設けられています。十分な経験もなくお金もない投資家が、信用取引をすれば、通常の取引よりも、ずっと早く資産を失ってしまうことが多いのです。

1-3.信用取引の保証金とは

信用取引を始めるには、担保として現金等を証券会社に預ける必要があります。この担保として預けている現金等を、信用取引保証金と呼びます。この保証金は、一般的には30万円以上を預け入れなければなりません。つまり、たとえ30万円以下の株式を扱うにしても、30万円以上の資金を預けないと信用口座で取引できないということです。

1-4.FXも信用取引

FXでは、信用取引と同じ性質の取引が、口座を開設すれば容易にできるようになっています。FXの取引会社に預けた資金がそのまま証拠金になり、レバレッジを設定することによって、あなたが預けている資金の何倍もの金額の取引をすることができます。日本の株式が3.3倍なのに対して、FXでは国内の取引業者の場合、25倍の資金での取引することが可能です。
 

2.信用取引のメリット・デメリット やる?やめとけ?


上記で信用取引について、何となくイメージできたのではないでしょうか。でも、「信用取引で本当に儲かるの?」「リスクはないの?」とあなたは感じているかもしれません。そこで、この章では信用取引のメリットと、デメリットを解説しましょう。

2-1.信用取引の最大のメリットは下落相場での利益

信用取引の利点は何と言っても、株価が下落している場面でも利益を得られるということでしょう。信用取引口座を開いていなければ、選択肢は「株を買う」か「様子見」かの2つです。信用取引ではこれに加え、「株を売って儲けを出す」という選択肢が増えるわけです。

そして、統計的には株が上昇する場面では比較的ゆっくり株価上がっていきますが、下落場面では崖から転げ落ちるかのように、一気に株価が下がることが多いです。つまり、信用取引でタイミング良く売り注文を出すことができれば、買いとは比較にならないほどの短期間で大きな利益を得られる可能性があるということです。

また、信用取引では資金の3.3倍の資金で取引することができるということも、大きなメリットと言えます。手持ち資金がない場合でも、チャンスがあれば、予約がわりに株を購入しておくという使い方もできます。

2-2.信用取引はやめとけ?破産の確率や危険性

信用取引には利点が多いのは事実ですが、誰にでも手放しで勧められるというわけではありません。上記で紹介したように、信用取引は手持ち資金がない場合でも取引できてしまいますので、損をするときには、普通に株を購入する(現物取引)以上に資金を失ってしまう危険性もあるということです。ですから、あなたに十分な投資経験がないなら、普通に株を購入する取引で(現物取引)で自信がつくまで経験を積んでから、信用取引口座を開設することをお勧めしたいです。

また、売りでも儲けが出せるということは、信用取引の大きな利点なのですが、非常に危険な行為にもなりかねないということも、お伝えしておかなければならないでしょう。たとえば、株を買う場合は、どれだけ損が出ても、株価がゼロになるという以上の損失は出ません。しかし、売りから入る場合は、理論上、無限に損失が出てしまう可能性を持っています。

どういうことかというと、株価がどこまで上がるのかという可能性には上限がないからです。現在1000円の株価が、下落してゼロになったとしても最大1000円の損失です。しかし売りから入った場合、株価は倍の2000円になることも、10倍の10000円になる可能性もあります。その上昇の可能性には限度がないことから、無限に損失が出る可能性があるということです。現実には、短期間で2倍になるようなことはそうそうありませんが、可能性としてはありうるということは、頭に入れて、適切な価格で損切りを設定しておくことが重要です。

3.信用取引の金利・追証・配当落調整金などの注意点


ここでは、信用取引を行ううえで、注意しておかなければならない、金利や追証、そして配当落調整金などについて解説します。経験のない個人投資家は、こうした知識がないまま、信用取引口座を開いてしまいます。そして、取引する中で痛い目を見て、覚えていくということが多いようです。あなたには、無駄な損失を出さないためにも、しっかりとチェックしておいてほしいです。

3-1.制度信用と一般信用

信用取引の注意点をお伝えする前に、覚えておいてほしいことがあります。それは信用取引には大きく分けて、制度信用と一般信用の2つがあるということです。一般信用取引は、あなたと証券会社とで直接結ぶ契約になります。銀行でお金を借りているのと同じですから、借りたものに対して金利を払う必要があります。制度信用でも金利が発生しますが、一般信用の方が金利を高く設定していることが多いです。

これに対して、制度信用取引は、「証券取引所が公表している制度信用銘柄選定基準を満たした銘柄のみを対象としておこなわれる信用取引」になります。つまり、証券取引所が認めた銘柄しか取引できないということです。そして、必ず6か月以内返済しなければなりません。

3-2.信用取引の金利と貸株料

信用取引における金利は、各証券会社でまちまちですが、大まかにいうと以下のような設定をしている証券会社が多いです。

制度信用の場合(年率)
買方の金利:2.3%程度
売方の金利:0%

一般信用の場合(年率)
買方金利:2.8%程度
売方の金利:一般信用では売りは扱っていないことが多い

上記のように制度信用では売り方の金利は0%ですが、その代わり株を借りるためのレンタル料(貸株料)が発生します。貸株料は、年1.15%程度と設定している証券会社が多いです。

3-3.信用取引の追証

信用取引では、手持ち資金がなくても取引ができますから、あなたが証券会社に預けている資金以上に損失が出る可能性もあります。ですから、信用取引では実際に取引をしている金額に対して、最低限、維持しなければならない保証金の割合が定められています。この最低限の保証金の割合を下回った場合、不足分の保証金を証券会社に入金しなければならなくなります。これを追証(おいしょう)といいます。

もし追証を期日までに証券会社に入金できなければ、買いであろうと売りであろうと強制的に決済され、割高な手数料まで取られてしまいます。けれど、追証が発生するほどの損失が出ているということは、その時点ですでにそのトレードは失敗していると考えた方がいいでしょう。あなたが十分に経験のある投資家なら、よほど特殊なケースを除いて、追証が発生する前に損失を確定して、決済できているはずですから。ですから、追証が発生してしまうようなトレードをしているなら、自らのトレードスタイルを見直す機会にすることを強く勧めたいです。

3-4.信用取引の配当落調整金

配当金がつく株式を保有していたら、配当日に配当金がもらえます。信用取引で株を買っている場合、この配当金に相当する調整処理を行います。これが配当落調整金です。買い手は調整額を受け取り、売り手は調整額を支払う必要があります。ただし、信用取引では、株主優待は原則受け取ることができません。

4.おわりに|信用取引の戦略


ここまで読んでみて、いかがでしたでしょうか。信用取引のことが、何となく理解できたのではないでしょうか。信用取引の魅力は、何と言っても売りから入って利益が出せることです。経済が悪くなってくると、買いだけで利益を出すことは困難です。そんな時に、信用取引で売りを狙ってみることを検討すれば、様々な可能性がひらけてきます。

また、信用取引はその取引状況が日々公開されています。信用取引を使ってどれだけの株が買われているのか、あるいは売られているのかが公表されているということです。信用取引の買いの数を買残、売りの数を売残と言いますが、制度信用の場合、6ヶ月以内に決済しなければなりません。たとえば、売残が多くなってくると、6ヶ月以内に返済しなければならない株ということですから、この売残が燃料となり大きく値上がりするのではないかという予想から戦略をねることもできます。ただし、買残と売残は制度信用だけでなく、一般信用も合わせた数値になります。その点には注意しておく必要があります。