MACDとは|見方・使い方や最適な設定とシグナル|計算式やルールも解説


MACDとは、期間の異なる2本の移動平均線を使って、株式やFXの売買タイミングをはかるためのテクニカル指標です。Moving Average Convergence Divergence(移動平均収束拡散法)という手法を採用しており、比較的ダマシが少ないとされてます。そのため、多くのトレーダーに人気のツールになっています。一部では、オシレーター系最強のテクニカル指標とも呼ばれることもあります。

この記事では、MACDの見方や使い方、サインの見きわめ方について解説していきます。実際のチャートを用いてのルール説明や、MACDを使ったトレードで特に勝率が高い、ダイバージェンスについても紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。

1.FXや株に使えるMACDの見方や使い方と最適な設定値


この章では、MACDの見方や、どのような設定を行えば最適かを解説していきます。また、売買サインや、ヒストグラムの意味と見方についても説明します。

1-1.MACDとは|オシレーター系テクニカル指標

MACDとは上記で説明したように、2本の移動平均線を使って相場の強弱を観測するツールです。ちなみにMACDは、「マックディー」と発音します。エムエーシーディではないので気をつけて(笑)。現在の価格が買われすぎなのか、売られすぎなのかを見るテクニカル指標をオシレーター系と呼び、MACDはその中の一つに数えられます。

オシレーター系のテクニカル指標には、他にストキャスティックスやRSIなどがありますが、これらとMACDの決定的な違いは、MACDには上限や下限がないということです。通常、オシレーター系テクニカル指標の場合、例えば上昇方向にトレンドが発生すると、ずっと買われすぎのサインが出っぱなしになるだけで、使いものにならなくなります。しかし、MACDには上限がないことから、トレンド状況下でも機能することが優れた点だと言えるでしょう。

MACDを開発者したのは、米国のジェラルド・アペルです。テクニカル分析を用いた投資手法で非常に評価されている人物で、シグナラート・コーポレーションをはじめとした、投資会社で民間資産を運用して大きな成功をおさめています。もともとは、精神分析学者していた人物です。そういえば、投資で成功した人には、なぜか精神分析を勉強した人が多いような気がします。

MACDは、直近の価格をより重視する計算がなされています。これにより出来る限り、ダマシをより少なくできるとされています。どうでしょう? MACDを、ちょっと使ってみたくなったのではないでしょうか? 早速、次項で実際のMACDを見ていきましょう。

1-2.MACD買いサイン(シグナル)|ゴールデンクロス

MACDは、MACDという線とシグナルという線、そしてヒストグラムの3つの要素で構成されています。MACDという言葉は、インジケーターそのものを表すと同時に、インジケーター中のラインのことも指す言葉です。ややこしいので、テクニカル指標内のMACDという線を指す場合、この記事では「MACDライン」と呼びましょう。また、もう一本の線のシグナルは「シグナルライン」ということにします。また、MACDというインジケーターを示す場合は、単に「MACD」と呼ぶことにします。

下図にチャートを示しました。上がローソク足チャート、下がMACDです。図中に示したように青い線がMACDライン、赤い線がシグナルライン、水色の棒状の連なりがヒストグラムです。

MACDの使い方の基本的な使用法として、MACDラインがシグナルラインを上から下に突き抜けたら売り、MACDラインがシグナルラインを下から上に突き抜けたら買いとなります。前者をデッドクロス、後者をゴールデンクロスと呼びます。下図では、上と同じチャートを使って、デッドクロスとゴールデンクロスの位置を緑の丸で示してみました。

左側の緑の丸で囲った箇所を見てください。青色のMACDラインが赤色のシグナルラインを上から下にクロスしていますよね。これがデッドクロス。これから価格が下げに転じるサインとされています。右側の緑の丸で囲った箇所では、青色のMACDラインが赤色のシグナルラインを下から上にクロスしているのが見て取れます。これがゴールデンクロスで、これから価格が上がる合図とされています。

上の図では、MACDがきちんと機能して、デッドクロスで価格が下げに転じていて、ゴールデンクロスで価格が上昇しています。けれど、MACDがいつもこのように、見事に相場の動きを捉えているとは限りません。使用する前に、現在の相場の動きにMACDが対応しているかを検証してから使用することが大切です。対応していないなら、今はMACDで取引すべきではないという判断もできます。

1-3.MACDの見方|ヒストグラムの意味とは

上記で、MACDラインとシグナルラインの見方について説明しましたが、では水色の棒状の連なりで表示されているヒストグラムは、どのように使えばいいのでしょうか。主に2つの機能があります。下図に、ヒストグラムを拡大した図を示します。

ヒストグラムの一つの機能として、デッドクロスやゴールデンクロスが起こった時に見やすくする役割があります。上図の緑の丸の位置で、デッドクロスが観測できます。デッドクロスが起こっていると同じ位置にあたるヒストグラムを、オレンジ色の矢印で示しました。ヒストグラムが中央のラインから、下に転じているのがわかるでしょうか。このようにヒストグラムが中央の線から下に転じれば、デッドクロスが起こっており、反対にヒストグラムが中央の線から上に転じればゴールデンクロスが起こっています。つまり、ヒストグラムは、MACDラインとシグナルラインの位置を、簡略に示したものだといえるでしょう。

ヒストグラムのもう一つの機能として、トレンドの継続を測るということが挙げられます。こちらの使い方のほうが実用的です。たとえば、下落トレンド時に直近(1つ前)のヒストグラムより新しくついたヒストグラムがのほうが低ければ、トレンドは継続していると考えられます。反対に直近のヒストグラムより、新しくついたヒストグラムのほうが高くなると、そろそろトレンドの終わりに警戒するという使い方ができます。

また、上昇トレンド時には、これとは反対に考えれば問題ありません。つまり、直近(1つ前)のヒストグラムより新しくついたヒストグラムがのほうが高ければ、トレンドが継続していると判断できます。逆に、直近のヒストグラムより、新しくついたヒストグラムのほうが低くなると、トレンドの勢いが衰えてきたと考えるのが妥当になるわけです。

1-4.MACDの設定方法と計算式|最適なパラメータとは

MACDのパラメーターの数値として、短期は12、長期は26、シグナルは9が使われるケースがほとんどです。ですから、特別な意図がない限りは、この数値を基本に使用するとことをおすすめします。

注意してほしいのは、MACDが現在の相場に合っていないからといって、特に根拠もなく適当にパラメーターをいじって、相場に合う数値を見つけて使用するのは危険です。なぜなら、それはたまたまその時だけ、その数値が相場に合ったという可能性が高いからです。

MACDに限らず、テクニカル指標はダマシも含めて、多くの人がどう考えているか、どう考える可能性が高いかをみるものです。ですから、誰も使っていないパラメーターの数値で、取引することにはあまり意味がありません。そんな使い方をすれば、テクニカル指標はオカルトや迷信のようなものになってしまうでしょう。

もっとMACDについて知りたいという方のために、MACDの計算式についても解説しておきましょう。

MACD=短期EMA-長期EMA(短期と長期のEMAの乖離幅)
シグナル=MACDのEMA

が計算式になります。ここで使用されているEMA(指数平滑移動平均線)とは、直近の価格を重視した特別な移動平均線で、以下の式のように直近(3日目)の終値を2回プラスして算出します。

EMA=(1日目の終値+2日目の終値+3日目の終値+3日目の終値)/3日間+1日

2.FXチャートでMACDを解説| 1分足・5分足の設定も

2-1.MACDの売買手法例|相性の良いテクニカル指標

MACDを単体で使うことは否定しませんが、より強力なのは他のテクニカル指標と組み合わせて使用することです。どのテクニカルにも欠点があり、ダマシもあります。それを少しでも少なくする一つの考え方として、テクニカル指標の併用が挙げられます。

ここでは、MACDとボリンジャーバンド、ストキャスティクスを組み合わせてみましょう。特にボリンジャーバンドは、MACDと相性がいいテクニカル指標です。

上図の中央に位置するMACDに、ゴールデンクロスが出ています(緑の丸)。それを裏付けるように、一番下にあるストキャスティクスも底値圏から上向きになっているのが確認できます。また、ローソク足を囲むように配置された、ボリンジャーバンドはスクイーズからエクスパンションに移行する前兆がみられます。

このように、3つのテクニカル指標が全て同じ方向を指し示した時にのみ、エントリーするとこで失敗することが驚くほど少なくなるでしょう。けれど、多くの人はとにかく儲けたいという欲ばかりが先行して、待つことができず、満足にサインを確認せぬままにポジションを取るから、最終的には負けてしまうことがほとんどです。

なお、ボリンジャーバンドについては以下の記事で詳しく説明しています。ボリンジャーバンドは一度覚えると、FXや株式で生き残るための強力な武器になります。ぜひ記事をチェックしてみてください。

ボリンジャーバンドとは|FXを例に見方や使い方、設定期間や計算式を解説

2-2.MACDのダイバージェンスはどう見る?


ダイバージェンスとは、簡単に言えば、価格は上げているのにオシレータが下げている状態のことを指します。価格が下げているのに、オシレーター
が上がっている場合も同じです。実際の相場では、MACDのダイバージェンスはよく観測できます。

下図に緑の線で、ダイバージェンスが発生している箇所を示しました。ローソク足では直近の価格を超えてきているのに、MACDラインは直近の価格よりも下げて、右肩下がりの状態になっています。

このケースでは、ダイバージェンスを強化しているものについて、ゴールデンクロスの否定が挙げられます。上図のMACDでは、一度ゴールデンクロスした後に、すぐにデッドクロスが付いているのが観測できるでしょう。これは何を意味しているかというと、ゴールデンクロスでロングポジションを取った人たちが、それを否定するかのようなダイバージェンスとデッドクロスで損切りしてくる可能性が高いということです。その結果、大きく相場が動くことになります。

余談になりますが、相場を大きく動かすのは多くの人が希望に満ちてポジションを取るときではなく、止むに止まれず損切りしたり、ロスカットしとなったときです。これ以上損ができないとポジションを不利な状態で投げ捨てなければならなくなった人が多ければ多いほど、価格は大きく動くのです。そういう視点でチャートを見ると、今まで漫然と見ていたチャートに、意味が見い出せてくるのではないでしょうか。

2-3.1分足・5分足の設定値について

よく1分足や5分足において、MACDのパラメーターの数値を変えることを推奨している方もいらっしゃいますが、私は賛成しません短期売買においても、短期は12、長期は26、シグナルは9のパラメーターを使った方が長い目で見て、資産が残ると考えます。

パラメーターを頻繁に変えるのは、どんな相場であっても儲けようとする考え方からきているのだと思います。けれど、相場は常に予測できるものではありません。標準的なパラメーターを使って、現在の相場に当てはまらないようでしたら、その日はトレードしないという決断ができるということの方が、長期的に稼ぐには大切なことになります。

3.おわりに|MACDはFXで機能する優れたオシレーター


MACDは特にFXで機能しやすい、優れたテクニカル指標と言えます。つまり、それだけMACDというテクニカル分析が、FXのトレーダーに一般的になっている証拠でもあります。けれど、それを拠り所にする人が多くなると、ダマシも増えてきます。

FXは、基本的にゼロサムゲームです。あなたと画面の向こうで売買しているトレーダーの、両方が儲けることはできません。誰かが儲けたということは、誰かが損したということです。あなたがポジションを取るときに、ではどんな人があなたと反対の売買をしているかを意識してみてください。あなたと反対の売買をしている人が、初心者であればあるほど、そのポジションは利益を生む可能性が高いといえます。

なお、FXに対する考え方や手法の理解を深めたいなら、以下の記事を参考にしてみてください。著者の10年以上の投資経験から、本気で役に立った本を紹介しています。投資の世界には、役に立つどころかむしろ害になる情報があふれています。つまり、何を読むのかではなく、何を読まないかの方が重要なのです。そうした意味で、本当に読んでいい書籍だけを厳選しています。

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